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12−2 理想気体の巨視的振る舞い

気体の圧力

単位体積あたりの面に垂直に働く力を圧力という。
面積S[m2]の面に力F[N]が働くとき,圧力P[N/m2]をと定める。単位は [N/m2]だが,SI単位系では1[Paパスカル]=1[N/m2] とする。
1気圧=76cmHg=0.76m×1m2×13.59×103Kg/m3×9.807m/s2/1m2=1.013×105Pa
  気体をミクロの立場で圧力P[Pa],体積V[m3],絶対温度T[K]の間に成り立つ関係式は以下の通り。
1気圧では1m2当たり約104KgW=10tonWであり,これは広げた新聞に約10tonWの力が働いている!

  ボイルの法則(R.Boyle1627-1691)

絶対温度Tが一定のもとで右上図のように空気を入れてゴム栓をした注射器を台ばかりの上に載せ,手で垂直にゆっくり力を加える。手の力の大きさを台ばかりの目盛りから読み,同時にそのときの注射器内の空気の体積を測定する。縦軸に圧力P=力F/(注射器の断面積),横軸に体積にとってグラフを描くと図のようになる。このことから

        「温度が一定のとき,一定質量の気体の体積Vは圧力Pに反比例する
                 PV=一定     これをボイルの法則という。

ボイルの法則は1662年に発見されたが,1676年E.Matriotが詳しく検証した。Matriot(マリオット)は目の盲点を発見している
  

      シャルルの法則J.A.C.Charles1746-1823)

右図のように垂直に立てたゴム栓付き注射器を水槽に入れ,先端に分銅を載せる。分銅は自由に動けるので圧力が一定と考えられる。
 水槽を加熱し,横軸を温度,縦軸を注射器内の空気の体積にとって右のグラフを作る。
 温度t=0(℃)の体積をV0,温度tのときの体積をV,絶対温度をT(K)=273+t(℃)とすると,グラフの傾きはで(気体の種類によらず一定値),これを定式化すると
       ∴  
      「圧力一定のとき,気体の体積と絶対温度は比例する」  これをシャルルの法則という。
シャルルの法則は1787年発見されたが1802年ゲイリュサックが検証し完成させたのでゲイリュサックの法則とも呼ばれる。ゲイリュサックは1804年気球で7000m上空で大気成分,地磁気を調査した。1808年気体の法則発見。
シャルルの法則によると絶対0度で体積V=0になるが,気体は低温になると液体,固体に状態変化するから0(K)の気体は存在しない。


     ボイルシャルルの法則

ボイルの法則とシャルルの法則を同時に表したものがボイルシャルルの法則である。 
                             

上左図で,状態1(グラフ@)はP1V1T1,中間状態は(グラフB)P2V 'T1,状態2(グラフA)は
       P
2V2T2 である。
状態1と中間状態の間でボイルの法則P1V1P2V ' (@とBの間はPV で囲まれた部分の面積が一定),
中間状態と状態2の間でシャルルの法則 の関係が成り立つ。両式から V ' を消去すると
                  (ボイル・シャルルの法則)    
が成り立つ。 
ボイルシャルルの法則は圧力が高すぎず,温度が低すぎない範囲ですべての気体に適応できるが,成り立つはには気体の種類によって異なる。液化しにくいH2,O2,N2かなり広い範囲で成り立つが,CO2は最も適応が狭い。Heが最も適応範囲が広い。


    理想気体(ideal gas)の状態方程式(equation of state)

「1molの気体は,気体の種類に関係なく,標準状態でほぼ22.4l の体積を占める」 ことから,1molの標準状態の気体について,ボイル・シャルルの法則にP=1.013×105Pa,V=22.4×10−3m3を代入して
     R
このR を気体定数という。1mol についてPVRT
物質量n では体積がn 倍になるから
    PVnRT

実在の気体では厳密にはこの関係式は成り立たない。ボイル・シャルルの法則が成り立つ気体を理想気体という。よってこの関係式を理想気体の状態方程式という。実在の気体では,分子間の位置エネルギーが無視できる範囲,つまり高温,低圧の状態が理想気体に近い状態である。以降は理想気体について考える。 
水が100℃,1atmで水蒸気になると,体積は約1700倍になる。立方体の各頂点に水分子が配置されているとし,水蒸気になったとして辺の長さはn倍になったとすると
     n3=1700からn≒11.9倍である。気体に圧縮性があるのは,気体の分子間距離が固体,液体に比べて大きいためである。
1l =(10cm)3=10-3m3   22.4l =22.4×10-3=2.24×10-2m3正確には22.41383 l
標準状態は0℃=273K  1気圧(atm)=1.013×105Pa
例1 T=0℃,P=1atm,V=1l の気体を入れた容器がある。
   (1) 圧力を一定にしてt '=100℃にした。体積V 'はVの何倍になるか
   (2) 体積を一定にしてt '=100℃にした。圧力p 'はp の何倍になったか。

  (1)
    (2)

例2 深さ10mの水中(水温は5℃)にあった体積V1の気泡は水面上で何倍になるか。ただし,水面での温度t2=27℃,大気圧P2=1atmとする。また,水深が1.0m毎に0.10atm圧力が高くなるとする。
       
深さ10mでの圧力をP1,温度をT1,水面での体積をV2温度をT2とすると,ボイル・シャルルの法則から
           倍

例3 3.2mgのメタン(分子量16)の体積V=20cm3が27℃のときの圧力Pはいくらか。

3.2(mg):n (mol)=16(g):1(mol)    ∴  
    

例4 球形の容器A,Bにそれぞの圧力,温度,物質量がPA=1atm,TA=273K,nA mol,PB=2.5atm,TB=343K,nB molの気体が入れてあり,コックで仕切られている。体積Vm3は同じである。コックを開いた後の圧力Pいくらか。ただしコックを開いた後も温度はA,Bともにコックを開く前と同じとする。

コックを開いた後のA,Bそれぞれの物質量をnA',nB'とすると,物質量は保存されているから
          n
AnBnA'+nB'
    コックを開く前後で気体の状態方程式を適用して
      A:1×VnAR×273,2.5VnBR×343
      B:PVnA'R×273,PVnB'R×343
  これらより
      




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