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【25】核分裂。核融合
1.核エネルギー(nuclear energy)

質量・エネルギー等価則
特殊相対性理論によると,質量mとエネルギーEは等価であり,Emc2 ( c は光速)    (25-1)    の関係がある。

核の質量は,それを構成する核子が単独で存在するときの和より僅かに小さい。その差を質量欠損という。
    質量欠損m={Zmp+(AZ)mn}−m0       (25-2)
つまり,核を構成するためにはmc2のエネルギーを必要とする。mc2を結合エネルギーという。
左に示すグラフの横軸は質量数A,縦軸は1核子当たりの結合エネルギーmc2/Aである。
  このグラフの特徴は,平均の核子1個当たりの値は8MeV程度であり,Fe56でその値が最大である。つまり,鉄の原子核が最も強く結合している。

例1 中性子,陽子,重陽子質量をそれぞれ1.0087u,1.0073u,2.0136uとすると
      の結合エネルギーE,質量欠損mは何MeVか。
   ただし,1u=1.661×10-27Kg,光速c=3.00×108m/s,
        1eV=1.60×10-19J とする。


m=(1.0087+1.0073)−2.0136=0.0024u=0.0024×(1.661×10-27)=4.0×10-30Kg
     E=4.0×10-30×(3.00×108)2=3.6×10-13J=2.3MeV
     1u をエネルギーに直すと      1u=(1.661×10-27)×(3.00×108)2=933MeVである。

例2 0.6MeVに加速された陽子を に当てたところ,2個のα粒子になって走り出した。そのエネルギーの和は17.9MeVであった。
       (1) 反応式を書け。
       (2) 質量欠損mは何Kgか。
       (3) mがエネルギーに変換されたと考え,エネルギーが保存されていることを示せ。
       ただし, =1.6726×10-27Kg,=11.6478×10-27Kg,=6.6448×10-27Kg,c2=8.9876×1016m2/s2,e=1.6022×10-19C
   とする。
  (1)     (  2.放射能現象 人工変換に出てきたコッククロフト,ウォルトンの実験である)
     (2)  m={(11.6478+1.6726)−2×6.6448}×10-27=0.0308×10-27Kg
    (3)  0.0308×10-27Kg=(0.0308×10-27)×8.9876×1016=2.77×10−12J=17.3MeV
              反応式の左辺=0.6+17.3=17.9MeV=右辺
例3 の反応は起こるか。
    ただし, =7.018u,=4.004u,=3.015uとする。
    7.018<4.004+3.015=7.019u  であり,左辺の質量数が小さいので自然の状態では起こらない。

           
E Mc2の説明(1946年アインシュタインによる)
質量Mの物体に左右からE/2のエネルギーの光(電磁波)を与える。高速をc とすると,S系で静止する物体を
v(vc)の等速で動くS' 系で見ると,光はE/cの運動量をもつから
S' 系では,冪=2×{(E/2)/c}cosθ=(E/c)×(v/c)=Ev/c2の運動量を得ることになる。
(∵ cv=(E/c):p)
vが一定なので運動量保存を考えるには,質量が増加したと考えなければならないので
運動量 pMvpMvMv  
    ∴   pMv=(Ev/c2)
    ∴     E M c2


2.核分裂(Nuclear fission)

U238より質量数が多いと陽子間による斥力が核を結びつけようとする力に勝ることが起こり,不安定になり質量数の小さな安定な核に変換される。このような現象が核分裂である。核分裂はフェルミ,ハーン,シュトラスマンらが,1934-1938年に発見(確認)した。

U235の場合,核分裂後に作られる核の割合を左図に示す。多数の分裂が起こるが,その例を示すと次のようである。
    →  
                →   
                →   
                →
右辺の中性子は高速で0.5MeV以上であり,この中性子とU235は反応しない。原子炉内では中性子の減速剤として重水,黒鉛,酸化ベリリウム,軽水を,反応制御剤としてCd,B,Xe,Hf を,反射壁はB,石墨を用いる。
  核分裂が連続的に起こることを連鎖反応といい,このための最小量を臨界量という。
形状,密度で異なるが,U235では約20Kg,Pu239では約5Kgである。

核分裂で生成物の質量和がU235と中性子の和より減少した分だけのエネルギーが放出される。1個のU235がほぼ1/2になると,(1.核エネルギー)核子当たりの結合エネルギー−質量数グラフからU235の縦軸mc2/A≒7.6MeV,質量数が半分の場合はmc2/A≒8.5MeVだから
   (8.5−7.6)×235=0.9×235=2.1×102MeV
1gの放出エネルギーは,(6.03×1023/235)=2.56×1021個だから,(2.56×1021)×(2.1×102)=5.38×1023MeV=8.60×1010J である。

原子炉(Nuclear reactor)
中性子のエネルギーの大きさで分類では(熱中性子炉,高速中性子炉),減速・冷却材により分類では(軽水炉,重水炉,黒鉛炉)に分けられる。
1942年フェルミによってはじめて作られた。炉心は,核燃料,減速材で構成され,これを反射材(減速材と同じ),遮蔽材(水,鉄,コンクリート)で囲む。炉心の冷却材は炭酸ガス,軽水,重水,溶融ナトリウム・カリウムなどを循環させて熱を取り出し,炉心の加熱を防ぎ動力に使う。大部分の原子炉は速度の遅い熱中性子炉である。

増殖炉(Breeder reactor)・・・運転中に消費される核燃料よりも多量の核分裂性物質が生産されるもの。核燃料に濃縮ウラン(U234,235,238からなりU235の比率である0.72%を人工的に高めたウラン)である。U235の割合を濃縮度といい,数%〜90%まである。気体状の六フッ化ウランUF6を多孔質の壁を通して拡散させ,ウランの質量差から生じる拡散速度の差を利用してU235の濃度を高め,この過程を数千回繰り返して濃縮する。
ガス拡散法・・・円筒に六フッ化ウランガスを流し込んで円筒を高速回転させ,円筒壁に重いU238を押しやり中心にU235を集める方法。
ガス遠心分離法・・・ガス量が少なく電力も1/10ですむので遠心分離器が多数必要になる。高価だがU238が多くないので炉を小さくでき,動力用原子炉に使われる。
ウランの濃縮法には他にレーザー法,化学法がある。

発電用高速増殖炉<もんじゅ>(28万KW 1994年臨界)。1995年ナトリウム漏れで停止していたが,2010年5月性能試験を再開。新型転換炉<ふげん>は廃止。
ウランの自然での存在比はU238が99.274%,U235が0.72%,U234が0.006%である。核分裂はU235の他にPu239,U233などで起こすので,最も存在比の大きいU238を使ってこれらを生成して核分裂させ利用する。反応の例は以下の通り。
     
   
                         
            沸騰水型原子炉(BWR)の仕組み                                BWR原子炉圧力容器内構造図
        (「電気事業連合会編原子力図面集」による)                     (「原子力安全研究協会編軽水炉発電所のあらまし」による)
3.核融合(Nuclear fusion)
質量数が大きい核が小さな核に分裂する過程でエネルギーを解放するのが核分裂であるのに対し,質量数の小さな核を融合させて質量数の大きな核にできる現象が核融合であり,このときにエネルギーを取り出すことができる。核融合を起こすためには107〜108Kの高温を必要とする。またこの状態を10-1〜101秒安定に保つ必要があるので,磁場,レーザーを用いる方法が検討されているが実用に供してない。
核融合は1938年ベーテ(H.A.Bethe1906-2005.3.6) によって理論が構築された。

核融合の例

の場合
     (+3.3MeV)
     + (+4.0MeV)
     (+17.6MeV)  → 水爆の反応式
  以上の反応で5個の から +24.9MeVのエネルギーが放出される。

他の例
          → 2  (+17MeV)  リチウム 爆弾の反応式
      コバルト爆弾
太陽で起こっている反応
       
       
       
       
   これらの反応で一段目のが2段目に,2段目のが3段目に,3段目のが4段目に,4段目のが1段目で循環して反応している。その結果,合計では  4+2 と書くことが出る。
 つまり,4個のに融合し,2個の陽電子と(2個のニュートリノ)を放射する反応が起こっている。太陽はその重力で高温・高圧ガスを閉じ込めていて,その結果核融合が一定の速さで進むように自動調整されている。この結果,太陽は一定の明るさで光りながらエネルギーを消費している。




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