健康とは:ウェル・ビーイング(Well-being) [WHO,1947]
 
Health is a state of complete physical, mental  and social well-being and not merely the absence of disease or infirmity.
 
  身体的(physical)
  精神的(mental)
  社会的(social)
    +
  気力的(spiritual)
 
上記のように、健康とは、身体的、精神的、社会的に良い状態である事をいい、単に疾患が無いことをいうわけではありません。また、3つの要素に気力的(spiritual)という要素を加える場合もあります。
 
さらに、メンタルヘルスについてWHOメンタルヘルス報告書2001では「文化の違いから、メンタルヘルスを総合的に定義することは、ほとんど不可能である。しかしながら、メンタルヘルスは、精神疾患の欠如よりはもっと広い意味であると一般に承認されている。」と定義付けています。
 
こうしたことを踏まえて、私たちが一般的に感じているメンタルヘルスの基準を考えてみます。
メンタルヘルスの基準
 
○精神障害がないこと
○一貫性と安定性のあるバランスの取れた人格を有していること
○自己の主体性を保ちながら、社会や環境に積極的に適応し、他人と
 の間に良い人間関係を築けること
○自分を取りまく現実をありのままに受けとめることができること
○新しい課題に直面したとき、回避せず、現実的で合理的な解決をは
 かれること
○将来に対して可能性や希望を持ち、自己実現をめざすことができること
 
などになるのではないでしょうか。
 
私たちは、仕事をする上でしばしば予期しない現実に直面します。そしてそれが元でそれまでの社会生活が送れなくなることがあります。
例えば重要な報告発表で失敗し、部下に助けてもらった事で自信を喪失し、人事への影響などを考えるようになって将来への不安が増加してうつ状態になり、最終的に会社に出社できなくなるなどのように、それまで順調だった人生が大きく変わってしまう場合があるのです。
そしてこうした事は誰にでも起こり得ることです。
 
現代のようにストレスの多い社会においてはメンタルヘルス対策は重要であり、特に産業界に大きな損失を与える前に対策をする事が何よりも必要な事となります。
 
ここでは、職域でのメンタルヘルス対策について考えてみたいと思います。
 
(1)企業内の相談体制の整備とプライバシーの保護
 
@ 人事・労務部門から独立したメンタルヘルス対応部門の設置
 まずプライバシー保護のため、人事・労務部門から独立性を保持できる形で、メンタルヘルス対応部門を設置する必要があります。メンタルヘルス対応部門には、衛生管理者や保健師等の産業保健専門職を配置することが望まれます。また、このような形でプライバシー保護を行っていることを従業員に周知することも必要です。
 
A 管理職に対する研修と産業保健専門職に対する研修の実施
 次に、管理職にメンタルヘルス対応の基本事項を理解してもらうため、研修を実施する必要があります。また、経営トップ自らがメンタルヘルスに対して理解する事も重要ですので、管理職と共に研修することが望ましいです。さらに、実際にメンタルヘルス事案に対応する産業保健専門職に対するカウンセリング研修等も実施する必要があります。
 
B 企業内で定期的に勉強会を開催
 名前だけの形式的な部門設置や、単発的な研修で終わらせない為に、企業内においての定期的な勉強会も行う必要があります。行政機関や医療機関が行っている研修会などに積極的に参加し、その内容を企業内にフィードバックする仕組みを作り、常に新しい情報を共有しておく事が重要です。
 
(2)外部相談機関の活用
 
@ 企業内の部門と外部相談機関との二本立て
 従業員は、会社にメンタルヘルスに関する相談を受けたことを知られることを嫌がる傾向がありますので、多くの企業では、外部相談機関に相談できるシステムを取り入れています。メンタルヘルス対応部門が人事・労務に対して秘密を保持できる体制を整備することは当然の事ですが、企業側がこうした体制を整えても従業員としては、企業内の部門に対して相談することを躊躇する場合が多いのが実状です。この為、メンタルヘルス対応部門とは別に、企業から完全に独立した外部相談機関と契約し、従業員がより相談しやすい環境を整える事が必要です。
 
A 外部相談機関との契約に当たっての留意事項
 外部相談機関に相談業務を委託する場合は、メンタルヘルス対応部門において、契約しようとする外部相談機関についての十分な調査を行うことが必要です。一口に外部相談機関といっても、得意とする分野がありますし、また、医療機関の場合も内科、心療内科、神経科、精神科というように本人の状態によっても変わってきます。さらに、カウンセリングや医療が必要かどうかの判断を適切に行うためには、相談を受ける者の十分な知識・経験が必要なので、それにも留意して機関を選定することが望まれます。
 
B 外部相談機関を選定するにあたってのアドバイス
 外部相談機関を選ぶにあたって、相談を受ける者が十分な知識や経験を持っていることも重要ですが、それ以上に重要なのが自らの能力の限界を知っていることと、豊富なネットワークを持っていることです。メンタルヘルスは画一的な処置で対処できるものではありません。その為、契約した外部相談機関にとって専門分野外の相談には十分に対応できない場合もあります。そうした時、契約した外部相談機関が自分だけでなんとかしようと能力外の不適切な対処を続けた場合は、効果が上がらないばかりか、かえって悪い結果を招きかねません。医療処置が必要なのか、カウンセリングが必要なのかによってもまったく対応が違ってきます。複数の外部相談機関と契約する事は難しいですから、豊富なネットワークを持つ外部相談機関を選ぶ事が重要です。しかし、だからといって多数のカウンセラーを有している大手の機関が良いかというと必ずしもそうとは限りません。こうした機関は全て自らの機関内で処理しようとする傾向が強いからです。結論を言えば、豊富なネットワークを持つ個人や小規模で運営している外部相談機関を選ぶのが得策です。そして、必ずメンタルヘルス対応部門の人間が、直接相談員に会って詳しい話を聞くようにしましょう。(得意とする相談内容や療法。それから相談員が途中で変わることがあるのかなどについて。)
群馬県内の職域メンタルヘルス情報は「職域メンタルヘルス交流会」でどうぞ。
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