寺子屋心理カウンセリングルーム
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健康ぐんま 第43号 2008 Summer  特集: 産業保健活動 最前線

企業のメンタルヘルス対策  羽鳥裕明

■企業のメンタルヘルスへの取り組みと問題点
ひと昔前までは心の病は個人的なものとして扱われ、企業はあまり関与していませんでした。しかしながら企業の責任が問われる時代となり、近年ではメンタルヘルス対策は企業にとって大きな関心事となっています。
対策として企業の勤労担当者などがまず取り組むのが情報収集です。他企業の動向や事例なども含めて、書籍などのほか講演会やセミナーへの参加を通して情報を集めます。そして次に、管理職への教育、社内報などでのPR、メンタル不全社員への対応マニュアル作成、職場復帰支援プログラム作成などを行うのが一般的です。
ここで、企業が社内のガイドラインを作成する際には様々な課題が発生します。例えば職場復帰についてリハビリ期間を設ける場合でも、その期間をどの程度に設定したらよいのかという問題があります。企業とすれば完全復帰に向けてのリハビリ期間という意識が強くなりますが、医師や心理カウンセラーなどからすれば、とりあえず様子を見て状態が悪くなるようであれば後退も考えています。心の病は再発の危険もありますので、回復期は特に慎重に経過を観察しながら対応することが大切なのです。また、病気の種類によってもその期間は異なってきます。ですから、リハビリ出勤期間を一律に1ヶ月とか3ヶ月とか決められないという問題があります。そしてさらに、この期間に面接などを通して本人から様子を聴くことがありますが、だれが面接するのかという事も重要になります。例えば本人がまじめな性格の場合、会社の上司などから「完全復帰大丈夫か?」と尋ねられれば、迷惑をかけたくないという気持ちから「大丈夫です」と無理をして答えてしまうこともあります。そしてその結果、完全復帰した数ヵ月後に再発してさらに状況を悪くしてしまうこともあるのです。

■企業のジレンマ
企業としては自らの中に心の病をつくり出す要因を抱えたまま、メンタル不全社員への対応をしなくてはならないというジレンマがあります。例えば心の病で長期休職している社員がいる場合、企業側としては本人の様子を知りたいと思います。しかし企業との心理的接点を切らないと本人の心が十分に休まらないのも事実です。つまり企業が長期休職者に連絡を取ることで回復を遅らせてしまう事もあるのです。
企業の抱えているこのようなジレンマを解消するための一つの方法が第三者の活用です。最近では、精神科医や心理カウンセラーを非常勤で雇う企業が増えています。精神科医や心理カウンセラーが企業内で相談に応じることは相談者にとってもメリットがあります。例えば、自分の話したことは許可無く会社側に報告されることが無いので人事査定などに影響するのではないかという不安が無く、安全が担保された状況の中で本音で話をすることが出来ますし、一方で、自分の職場とまったく接点が無く内情を知らない医師やカウンセラーに話しをするのではないので、企業への橋渡しをしてもらえるのではないかという期待感を持つことも出来るわけです。
また企業側としても、社員の中に内在化しているにもかかわらず表面化しないまま問題が発生してきた部分に間接的に手をつけることが出来るというメリットがありますし、対応マニュアル作成時などに専門家の意見を取り入れながら一緒に作り上げていくことができるというメリットもあります。

■これからのメンタルヘルス対策
これまでは、企業のメンタルヘルス対策というと専門的治療と再発防止の『三次予防』、早期発見と早期治療の『二次予防』が中心でした。しかしいずれにしても一度メンタル不全が発生してしまうと、その対応はとても大変です。こうした中、そもそも問題を発生させないように対策する『一次予防』が費用面からみても有効であるとして企業でも注目されています。
現在、心の病の原因として広く認知されているのが職場での人間関係や、コミュニケーションの希薄化です。これらはアンケート調査などでも必ず上位となります。つまり人間関係やコミュニケーション問題がストレスを生み、こうしたストレスが心の病に結びついているのですから、これらが改善されない限りはメンタル不全問題がなくなることはありませんし、逆にこれらを改善すれば一次予防としての効果も大きいということになります。具体的には全社員を対象とした取り組みが必要です。現在わたしが勤務する企業でも全社員を対象とした講演会を定期的に行っています。最近の講演会では、心理カウンセラーが円滑なコミュニケーションとストレスを生むコミュニケーションの違いなどを分かりやすく解説したり、心理テストを用いて自分がどのようなタイプの人間なのかを知ってもらい、自分が陥りやすいコミュニケーションパターンに気づいてもらうという取り組みをしています(図1参照)。職場のコミュニケーション改善には、まず今の職場で自分や同僚がどのようなコミュニケーションをしているのかを知ることから始めなければなりません。自己理解と他者理解が進むことで円滑な人間関係を築くことができ、これにより職場でのストレス軽減がはかれるわけです。ストレスの少ない職場というのは心理的に窮屈でない職場ということです。そして、こうした職場からは柔軟な発想が生まれやすく、企業の発展につながることが期待できます。もしかしたら企業にとってのメンタルヘルス対策は、新たな負担ではなくて、発展のための原動力なのかもしれません。
    図1 コミュニケーションについて
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