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廣瀬川



広瀬川は前橋の中心部を流れる、流れの速い川である。川辺には柳の木が植えられ市民に親しまれている。市内にかかる厩橋から久留間橋までの間に朔太郎、室生犀星、草野心平、山村暮鳥、伊藤信吉、東宮七男、、北原白秋、および谷川俊太郎をはじめとする朔太郎文学賞受賞者など多数の詩碑、歌碑がある。
  朔太郎橋の前には前橋文学館があり、朔太郎が残した自筆原稿やノート、著作から遺品までを一堂に集め展示。「ぎたる弾くひと」「追憶の群像」「抒情と憤怒」「郷愁の日々」「忘れえぬ人々」の各テーマを設け、より分かりやすく朔太郎の全体像に迫っている。また、平井晩村、高橋元吉、山村暮鳥、萩原恭次郎、伊藤信吉など前橋ゆかりの詩人・文学者たちを紹介している。
広瀬川の詩碑。碑面の左側の柱は、旧萩原家の門柱の一本を記念として使用している。昭和1970年5月に設置された。

廣瀬川
廣瀬川白く流れたり
時さればみな幻想は消えゆかん。
われの
生涯らいふを釣らんとして
過去の日川邊に糸をたれしが
ああかの幸福は遠きにすぎさり
ちひさき魚は
にもとまらず。

「宿命」の中の「物みなは歳日と共に亡び行く
 わが故郷に歸れる日、ひそかに祕めて歌へるうた」より

ものみなは歳日としひと共に亡び行く。
ひとり來てさまよへば
流れも速き廣瀬川。
何にせかれて
とどむべき
憂ひのみ永く殘りて
わが情熱の日も暮れ行けり。

 久しぶりで故郷へ歸り、廣瀬川の河畔を逍遙しながら、私はさびしくこの詩を誦した。
 物みなは
歳日としひと共に亡び行く――郷土望景詩に歌つたすべての古蹟が、殆んど皆跡方もなく廢滅して、再度ふたたびまた若かつた日の記憶を、郷土に見ることができないので、心寂寞の情にさしぐんだのである。
 全く何もかも變つてしまつた。昔ながらに變らぬものは、廣瀬川の白い流れと、利根川の速い川瀬と、昔、國定忠治が立て籠つた、赤城山とがあるばかりだ。
     


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